事務をつかさどる

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法改正に対応するための提案を紹介します。


2  20年後の学校事務

~「2020 年度新規採用」Aさんの 20 年後のある一日 ~

  2040 年 4 月 6 日 9:00 家でパソコンの電源を入れ,これから鹿児島小学校の転入職員の手当申請書類をチェックすることになる。前日までに職員が入力した書類をチェックし, 中央処理センターに送信するだけでAIが認定・支給してくれる。昔に比べ楽になった。庶務(給与・旅費・福利厚生)なども基礎データを入力すればAIがすべて行ってくれ るのだ。週のうち 1 日は在宅で仕事をし,あとの2日は学校へ行く。学校に行っても,施設管理・学校徴収金・就学援助事務などはアウトソーシングされ,財務マネジメントが主な仕事ではあるが,学校経営スタッフとして地域とのコーディネートや学校評価などの 仕事も携わっている。
  遅れましたが,私A,現在 42 歳独身である。家事はすべてロボットが済ましてくれる。最近社会保険料が値上がりし,給与の約 40%になり,私同様,大多数の仲間が空いた 日は別の仕事をするなど,結構多忙な毎日である。

  20 年後,私たちはAさんのようになっているのでしょうか? その答えを出すキーワードがあります。「人口減」と「高齢化社会」そして「シンギュラリティ(技術的特異点)」です。 今後日本社会は,急速な人口減と高齢化 → 労働力の減少 → 外部人材の活用 → IT技 術の進歩とAIの活用という道筋をたどることが予想されます。表1を見ると,日本はますます高齢化がすすんでいき,20 年後は3人に1人が 65 歳以上 になり,人口も2千万人程度減少することが読み取れます。

●シンギュラリティ(技術的特異点)とは? シンギュラリティとは,AI(人工知能)が発達し,人間の知性を超えることによって, 予測できないスピードで社会が変化することを表す考え方。日本語では,「技術的特異点」と表現される。人工知能研究の世界的な権威であるレイ・カーツワイル博士により, 2005 年刊行の書籍の中で提唱された。


  人口減少は確実に労働人口の減少(教員・事務職員数の減少)をもたらし,それに伴い効率化が求められ,事務処理の集中化やアウトソーシング,共同実施による事務処理が一層進められることでしょう。本県の知事部局においては平成 24 年度から庶務事務の集中化が行われ,給与・旅費・人事服務・福利厚生など4事務 40 業務が職員自ら各種申請等をパソコンに入力し,総務事務センターにおいて集中処理することになりました(資料1参照)。

  •   資料1 知事部局における集中化(庶務事務センターの対象となる業務一覧)


  •   また,20 年後はICTの技術は加速度的に進み,2045 年までにはAIが人間の知能を超 えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達すると言われています。
      2015 年 12 月に英・オックスフォード大学のA・オズボーン准教授と(株)野村総合研究所の共同研究により発表された「 601 種の職業ごとに,コンピューター技術による代替確率を試算」という調査データから,女性セブン誌( 2018 年 6 月 22 日号)には,「無くなる職業・残る職業ランキング」で学校事務は,無くなる職業ランキング6位(同率4位)であることが掲載されています。この研究では 20 年後は約半分の職業がAI等に取って代わる可能性 があると推計しています。(次ページ 表2参照)これらの研究結果は,今後,私たちがグランドデザインを描く参考になるでしょう。

    ※ 「AI」・「機械学習」・「ディープラーニング」の説明
  •   資料2 人工知能(Aritficial Intelligence)とは?


  •   さて,何がこのような結果をもたらしたのでしょう。 無くなる仕事は単純で繰り返し作業, 逆に生き残る職業とは,対人間に関する仕事・創造的知性が必要な仕事であることがいえます。アウトソーシングやAI化は私たちが望む望まないにかかわらず,今後,段階的に導入されることでしょう。むしろ導入されるという消極的考えから,それらと共存し効率化を図り,余った時間を事務職員本来の専門的分野の事務(付加価値の高い業務)をするべきと考える方がこれからの事務職員にとって意義あるものだと考えます。 未来が明るいか,暗いかは,今私たち事務職員自身の動向にかかっていると思います。20年後AIに使われる事務職員にならないため,「チーム学校」の中で,専門的分野のリーダーシップを発揮できるような事務職員を目指さなければなりません。このため「事務をつかさどるための専門性とは何か」,「期待の高まりにどう応えるか」について次の項で考えていきましょう。

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