3 学校における事務職員の専門性
中央教育審議会は平成 31 年 1 月 25 日に「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答
申)」を取りまとめました。教師のこれまでの働き方を見直し,自らの授業を磨くとともに日々の生活の質や教職人生を豊かにすることで,自らの人間性や創造性を高め,子供たちに対して効果的な教育活動を行うことができるようになることを目的として,学校の働き方改革の方策が示されました。
そして,この答申では事務職員についても次のように言及されています。
事務職員は,学校における基幹的職員であり,小中学校等で原則必置。
事務職員は,事務をつかさどり,学校組織における唯一の総務・財務等に通じる専門職。
学校におけるマネジメント機能を十分に発揮できるようにするため,事務職員がその専門性を生かして,学校の事務を一定の責任をもって自己の担任事項として処理し,より主体的・積極的に校務運営に参画する。
さて,少しアプローチを変えて,私たちに期待されていることを考えていきましょう。「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き 方改革に関する総合的な方策について(答申)」において,事務職員に期待することが以下のとおりまとめられています。
事務職員の校務運営への参画の推進
学校におけるマネジメント機能を十分に発揮できるようにするため,事務職員がより主体的・積極的に,業務改善をはじめとする校務運営に参画するとともに,採用から 研修等を通じて,事務職員の資質・能力,意欲の向上のための取組を進めること。また,勤務の実情を踏まえつつ,事務職員に過度に業務が集中することにならないよう,法制化された共同学校事務室の活用や,庶務事務システムの導入等により,事務処理の効率 化等を図りつつ,教師の事務負担の軽減や事務職員の学校運営への支援・参画の拡大等を積極的に進めること。専門スタッフとの役割分担の明確化及び支援
「チームとしての学校」として,事務職員や専門的な知見をもち,児童生徒により効果的な指導・助言が行えるスクールカウンセラー,スクールソーシャルワーカー,部活 指導員等の専門スタッフとの役割分担を明確にし,専門スタッフが学校に対して理解を深め,必要な資質・能力を備えることができるような研修等を実施するとともに,人員が確保できるよう学校に対して必要な支援を行うよう努めること。学校徴収金の徴収・管理
学校徴収金は,銀行振り込み・口座引き落としによる徴収を基本とし,その徴収・管理を学校ではなく,教育委員会事務局や首長部局が担っていくこと。仮に,学校が担わ ざるを得ない場合であっても,地域や学校の実情に応じて事務職員等に業務移譲しながら,教師の業務としないようにすること。地域ボランティアとの連絡調整
地域ボランティアとの連絡調整を行う地域学校協働活動推進員等と学校の連絡調整の際の学校側の窓口としては,主幹教諭や事務職員を地域連携担当と校務分掌上位置付けて,その役割を積極的に担うことが考えられる。これを推進するため,地域連携担当教職員について,学校における地域連携の窓口として,校務分掌上位置付けるよう促進し,学校管理規則や標準職務例に規定すること。調査・統計等への回答等
教育委員会による学校への調査・照会について,調査の対象(悉皆(しっかい)/抽出)・頻度・時期・内容・様式等(選択式,WEB フォーム等)の精査や,調査項目の工 夫による複数の調査の一元化を行うこと。また,首長部局において学校を対象とした調査を行う場合についても,調査項目の重複排除等,報告者負担の軽減に向けた不断の見直しを行うよう配慮を働きかけること。このような精査をした上で,必要な調査・統計等への回答は,例えば,教育課程の編成・実施や生徒指導など教師の専門性に深く関わ るもの以外の調査については,事務職員等が中心となって回答するなど,可能な限り,教師や教頭・副校長等の負担を軽減するとともに,調査結果が調査対象校に共有されるよう取組を進めること。学校行事等の準備・運営
学校行事に関する業務のうち,学校行事に必要な物品の準備,講演会の講師や職場体験活動受入れ企業との日程調整,修学旅行の運営等は,教師との連携の上で,事務職員の参画や民間委託等による外部人材等の参画を図ること。しかし,標準的職務と一言で言っても,私たちの仕事柄,やはり多岐にわたります。これに示された知識や技能を身につけるためにはどうしたらよいでしょうか。その悩みに応えるために,昨年度の大会で標準的職務表に基づいた研修体系を提案しました。この研修体系 と答申を具体的につなげてみます。
例えば,「事務職員の校務運営への参画の推進について」は,標準的職務表では事務職員が共通してつかさどる職務に,学校組織マネジメントの推進や学校のグランドデザイン・学 校経営計画策定及び実行への参画,企画・運営委員会等への参画,として挙げています。そして,これらを達成するための研修内容として,教育基本法や学習指導要領の把握,コミュ ニケーション力や情報収集力,表現力などを挙げています。学校で勤務する職員として,どのような根拠があって学校が運営されているのかを知り,行政的視点で企画したり,提案し たりすることを求めています。そこで,企画・運営委員会などが設置されているのであれば構成メンバーとなり,校長先生や教頭先生,主任の先生方と積極的に学校のことや授業のことを話すことで,学校の課題や困っていることに気付き,行政的視点から解決策を見つけ出 すことも可能だと考えます。管理職や教員,保護者,地域の方々とコミュニケーションを取り,よりよい解決策を模索していく過程は事務職員にとってよい経験になるはずです。
では「学校徴収金の徴収・管理」についてはどうでしょうか。標準的職務表では事務職員及び事務主査がつかさどる職務に,校納金に関することが挙げられています。達成するため の研修内容として,学校徴収金の理解,未納金対応,公会計化などが挙げられています。つまり,ただ集金するだけでなく,費用対効果を含め,なぜ集金する必要があるのか,なぜ払うことができないのか,どうすればより家庭や学校,児童・生徒のためになるのかを考え, 学び,実践することを求めています。昨年度の分科会で会計業務の見直しについての発表がありました。複数ある会計を会計の特性に応じて一本化し,その過程で支出責任者を担任から事務職員へ委譲することにより,学級費の支出抑制につなげられた,という発表でした。 学校徴収金に関する課題は,学校によって大きく異なりますが,まずは保護者の金銭的負担と,教員や事務職員の事務的負担の軽減を考えてはどうでしょうか。特に公会計化については,文部科学省が学校給食費の徴収,管理を自治体が行うよう都道府県教委などに通知し, ガイドラインも作られています。しかし,学校徴収金は給食費だけでなく,補助教材費,PTA会費,体育文化振興費,学級費,旅行積立金等,各学校名称に違いはあれど多岐にわたるため,各学校共通の給食費とその他個別の徴収金を同一に扱い,自治体に徴収,管理を委 譲することは難しい部分があります。公会計化は学校の業務改善に大きな効果を発揮しますが,学校にある全ての会計を委譲することが学校や,子供,保護者のために最も有効であるかは慎重に判断しなければなりません。この公会計化の全国の動向や見識も研修を通し て深めていく必要があります。
答申の他の部分についても,どのような研修をすれば達成できるのか研修体系に盛り込まれています。